リムゾン

「これも生きるため・・・『許して』とは言わない、けど・・・」
少女は男の頭に銃口を向け引き金を絞る。
「御免」
銃声が住宅街に響き渡る、それは青い空へ響いていた。



私がこの町に来て何ヶ月が去った、空は晴れているし今日の朝は調子が良い。
私は冷蔵庫からバターを戸棚からパンを食器棚から皿を取り出す。
トースターにパンを入れ焼けるのを待つ。
その間に昔の事を思い出す、日課だ。
私は生まれて間もなく他人に売られた、だから親の顔を知らない。
知っているというと私のどこかが母でどこかが父であることだ。
私に名前は無かった、買った本人は『お前』や『貴様』と呼んでいて自分の名前は知らないもし、呼んだ事があっても覚えてはいない。
私は七歳まで買った人と暮らしていた、裕福な家庭の中で自分は酷い目にあっていたことは覚えている、あのときの体の痣は酷かった。
その後、その男は警察に捕まり、行く場所を失った私は警察の諜報機関に引きとられて訓練と共に育てられた。
最初に考えたことそれは・・・自分の名前、私の買い手は私に酷い名前を付けていたので自分でつけた。
名前は『メイ』
三月に私はここに来た、それを忘れないために付けた名だ。
作業員は日本語で『命』という意味があるらしいがよくわからない。
チン!
トースターのパンが焼けた少し黒くなっていた。
焼きすぎた、でもよくあることだから仕方が無い。
このトースターは壊れている、何年も使った、それは買い手の酷い生活が終わってから同じ年ほどたった物だ。
このトースターは最初に教官がくれたものだ『自分の健康は自分で管理するように自分の生活も自分でするものだ』といわれた。
その教官は優しかった、その前の生活よりは楽だった。

私は涙を流したずっと前より良い涙だ、ずっとこらえていたものがどこかで吹っ切れていた。
そんな事を考えているよりも私はバターを塗る、バターに何の思い出は無い、昔、ジャムを使っていたがジャムは好きではない。
今日も同じ様に武器屋に行く。
火薬の匂い、今日も弾薬とMDを買って、奥の練習場で練習をする。
まずは練習、ハンドガンのマガジンに弾を込めて装填、標準を合わせ撃つ。
いつも通り一ケース終わると近くのベンチに座りMDをMDウォークマンに入れる。
MDは音を立てながら読み取る。
『やあ、聞こえるかい?』
若い男の声、新人の司令官の声だ、また新人が入ったのかと思う。
『司令部から任務を伝えます。この町に麻薬の取引が行われる情報が入った、その量を確認、知らせてくれ・・・場所は明日知らせる以上』
そのMDにはもう一つ伝言があった、これもいつも通りだ。
『後、君は女の子だと聞いた、また今度お茶をしませんか?場所は・・・』
私は再生を止めMDを取り出し馬鹿馬鹿しいと思いMDを砕きゴミ箱に捨てた。
過去のことを思い出して自分を慰めている訳ではない・・・ただ、ふと考えてしまう。
雲が太陽を覆い隠す今日、私はいつものように朝食を冷蔵庫の中から探す。
卵を取り出しコンロに火を付けるが付かない。
このマンションに来てからずっとそうだ、でも私は期待するいつかこのコンロに火が付くのを。 しかし、今は朝食が取りたい、仕方なく市販のガスコンロを使う、軽いそろそろガスの交換時期だ、と思いながら火を付ける。
フライパンに油を敷き暖める、その上に卵を割り入れる。
その後いつものようにトースターにパンを入れるバターはいらない。
そして、考える。
指令官のことだ。
司令官はいつも違う大体予想で五十人、多分やめた人間もいる。
年の幅は多く大体二十五から七十代あたりだ。
任務を伝えた後、私には必ずコメントが来る、これは全員に行っているのかどうかは解らない。
コメントは人それぞれだ、七十代あたりは『頑張りたまえ』とかが多い、これはこれでいいだが二十代辺りはコメントが嫌だ『お茶しませんか?』とか『一度会いましょう』とか、本当に仕事をしているのか?といつも思う、中には普通の人もいるけど・・・。
こういう考えは時間が経つのが遅い。
目玉焼きは綺麗に焼け、パンは焦げた。
焦げ目の付いたパンに目玉焼きを乗せ食べる、今日はこれがいいと思った。
今日も武器屋に行き弾薬とMDを買い練習をする。
練習終了、今日の任務開始場所を聞く。
『こんにちは』
今日は五十代の男性の声だった。
『任務の場所を伝える、今回は港の第二、第三倉庫の近くで薬の取引が行われる、日時は二十五日から三日後時間は昼の三時、成功を祈る』
二つ目の伝言を聞く。
『三月三十日は君の誕生だと聞いた、少々早めだが「誕生日おめでとう」と伝えておく、以上』 彼女はMDを砕かずそのまま持って帰る、任務の内容が外れていたら他人のせいにする理不尽な司令官がいるからだ。
当然任務が成功すれば破棄する、それまでの品だ。
銃の掃除を済ませると、部屋の掃除をする、しかしこの部屋は生活用品くらいしかない。 本も無ければ冷房も扇風機も無い、まあこんな涼しい国だから要らない、必要なのはストーブくらいだ。
服や下着は三日に一度捨てる、そうしないと部屋が血の匂いで充満する、大体任務は三日に一度でほとんど他人と自分の血が流れる。
体の傷も結構ある、顔は一度も傷ついた事がない。
適度に掃除を済ませると夕方になる。
その後買い物だ、店は商店街くらいしかない。
いつものように食料を、ついでにガスを買う。
この国は王国で昔は治安がよかった、しかし今は国の体制が悪く犯罪が多発している、その量は国の五人に一人は犯罪者と言われるほどだ。
いつも誰かの視線に気をつけなければならないそんな町なのだ。
そして私はその犯罪者の行動を阻止するために作られた国の諜報機関で働いている。
誰もが望む平和それのために頑張っているのだと、ずっと私は思っている。



今日は珍しく客が来ていた。
客と言っても同じ諜報の仲間だ。
彼は任務の何日か前に必ず来る、何の目的かは分からない。
私は何故かその時だけシャワーを浴びる。
いつもなら、夕食の後にするのに・・・。
自分は血の匂いを気にしたのだろうか、体や髪を綺麗に洗う。
シャワーから出た時、彼は読書をしていた。
黒く擦り切れているのでタイトルは解らない。
部屋のタンスから下着を取る、彼は部屋にいるが気にならない。
彼は女に興味は無い、それはホモと言う意味ではない。
私たちの仲間はそれぞれ事情があって諜報機関に入ったのだ。
服に着替える、彼はずっと本を読んでいる。
「何故来たの?」
私はいつものように尋ねる。
「近くで道路工事があって、読書の邪魔だから来た。」
いつも何か言い訳を持ってくる、何故彼はここに来たがるのだろう。
私は考えるのを止め朝食を探す。
「朝食食べる?」
「ああ、ありがとう」
今日の朝食はサラダと焦げたパンを二人分作った。
彼は本を置き朝食を食べる。
彼は美味しいといって朝食をたいらげた。
私はそれを見て安心した。
彼はある日突然やってくるようになった。
今と同じように本を読んでいた。
彼は昔、私と同じ時期にやってきた、年上で何もいわない彼は時間だけは正確だった。
彼の名は『アル』略称ではないアルはアルだ。
アルは大胆な行為はしない、ずっとその場にいるだけだ。
「そろそろ私、練習に行ってくるから。」
私は部屋を後にすると彼は本を読みながら微笑んだ。
練習後私は自宅に帰宅した。
ドアノブに手が触れるとき、中から音がした。
彼ではない、彼はそこらへんを回る男ではない帰るときはまっすぐドアに歩み寄るはずだ。
銃を抜きドアを少し開き、ばれないように中をのぞく。
彼は帰ったのだろう定位置にはいない。
私は警戒しながら中に入る。
部屋の辺りを見回すがその部屋に誰もいない、私は銃をしまい一息つく。
荒らした形跡なし、盗まれたものなし、私はその場で確認する。
確かに誰かがいた気配はしていたが・・・。
私が油断していたその時だった。
「!」
後ろに誰かが抱きつく。
「いい匂いだ・・・。」
その声に私は振り払おうともせず抵抗する力をなくす。
その声とはアルだった。
「あなたは昔と違う・・・あなたは誰?」
「俺は君の知っているアルだ、変わりなどしていない。」
彼は昔と変わらないしゃべり方で言う。
「この行為は何?今度からはドアの後ろも気をつけろと?」
「君は少しも変わっていない、変わろうとしない。」
「何が目的?」
「何も」
「この行為には意味は?」
「君の反応を伺うため。」
沈黙・・・。
彼は抱きついた腕を放す。
「君は俺の行為に抵抗をしなかった、君も・・・いや、関係無いそれじゃ。」
彼はそういって帰っていった。
久しぶりに嫌な夢を見た。
目が覚めたときその夢の内容を全て忘れたが、嫌な夢だとすぐに判断できた。
私は朝食を食べて銃の点検をする。
今日は練習をしない、明日のために体調をよくするためだ。
家の中でベッドに座り込み思い出す。
私の中の彼の記憶を。
彼は私が機関に入ってまもなく入った。
私より一つ年上で、何もしゃべらない彼だった。
彼の趣味は読書、いつも暇なときは本を読んでいた。
彼は時間に正確だった、時計が無くとも同じ時間に行動をする人だった。
私は彼を見ていた、同じ境遇者だった。
見ていた?話をしたことが無いのに。
見ていた?友達だと思ったから?
見ていた?私は何のために彼を見ていたのだ?
私は目が覚める、知らず知らずのうちに眠っていた。
夕日が沈み辺りを赤く染める。
そして暗い闇が部屋を覆った。



任務遂行の日、私は港の第二、第三倉庫を双眼鏡で見ていた。
時間は昼の三時に差し掛かった。
三人のトランクを持った男が現れる、二人は大きなトランクを持ち、海の方向に近づく。
海の方からヘリが一機近づく。
ヘリに男たちはトランクを入れるそして、それより少し小さめのトランクを四つ取る。
男たちはトランクを空ける、中身は大量の札束だった。
「何見ているんだ?」
私は後ろを見る、そこには三人の男がいた。
「景色を・・・。」
「嘘だな、今の薬の取引を見ていただろう?」
私は銃の安全装置がかかっているか確認する。
「何もいわねえ、ってことは本当なんだな?」
「だとしたら?」
「殺す」
男がそういった時、私は銃を引き抜きその男の額に標準を定め引き金を引く。
銃声
男の額に当たり血を流しながらその場に倒れる。
もう二人は呆然として立ちすくむ。
もう一人に標準を合わせ打つ、胴体に二発命中男はよろけて倒れる。
「くっそ!」
男は銃を引くが男の方が遅かった、私は頭に二発撃ち込む。
頭を撃抜いた二人は死んでいたが、胴体を狙った男は微かに息があった。
男は苦しそうに唸り荒い息をする。
私は銃口を息のある男の頭に向ける。
「苦しいでしょ?でも、すぐに楽になるから・・・御免」
銃声は空へと響いた。



私は結果を機関に報告した。
任務終了の時、必ず機関に戻る。
機関には沢山の情報が交差している、ガセネタもあるが大体が本当に起きる事だ。
私はこの機関に戻るのは嫌ではないだが、この機関に長くはい居続けたくは無い。
理由はわからない、とにかく私はその機関から離れたくなる。
数分、私はその時の結果を言う。
その数分が、何時間にも感じられた。
機関から帰った私は、まず血のついた服をビニール袋につめ、ダンボール箱に入れ機関に送る。
何故、そんな事をしないといけないかと言うと、ごみ処理にそのまま出すと怪しまれるからだ。
一応身を隠す者、簡単にバレたら機関の意味が無い。
ビニールの中なのでダンボールに血は付かない。
後は国の運送業に任せればいい。
ダンボールに血の付いた服を入れると、また買い物に出かける。
新しい服を買うためだ。
とは言えただ適当に服を買うだけだ、ファッションは関係無い白か黒の無地の服と動きやすいズボンを買うだけだ。
可愛らしさとか、美しさとか要らない、どうせ血でまみれて捨ててしまうのだから。
今日はいい天気ではなかった、空気もにごって良くない。
しかし、いつものように朝食を出し、食べた後、武器屋で練習をする。
今日の任務は基地の潜入、兵器の量を調べ、最悪の場合、破壊することだった。
潜入は一人では危険なので、このときはパートナーが付く。
そのパートナーがアルだった。
練習が終わり、私が家に帰ると、アルが家に来ていた。
時間が分からない時は早めに行動する、それが彼の良いところで、悪い所であった。
「先に邪魔しているよ。」
本を読んでいた彼は一度私を見てそれを告げるとまた本を読み直す。
彼の顔に表情が無かった、彼は本を読んでいなくても表情を表さない。
たまに微笑むが数秒の事だ。
やはり、本の題名は黒く擦り切れて分からなかった。
「気になるのか?」
急に彼は私に問う。
「何が?」
私は普通に答える。
「いつも視線が本のタイトルに来ていたから聞いてみた。」
彼は私の視線を見ることなく感じていた。
「そんな事無いけど」
私は嘘をつく。
彼は本をまた読み始めた。
私はベッドで眠っていた、彼は椅子で眠っている。
今日の天気は良い、雲一つ無い晴天だ。
朝食を食べると練習しに出かけるが、今日は彼が同行だ
。 『場所は東の工業地帯だ、支給される作業員の服を着用して潜入すること、武器は持参で持ってくること以上だ』
中年の司令官の声は伝言を言う。
『誕生日おめでとう』
今日は三月三十日だということに私は気付いた。



任務開始二日前
彼は下見に工業地帯へと足を運んでいた。
私は今日の練習をやめ、工業地帯の地図を見て内容を覚えていた。
工業地帯に数回行ったことがあるが念のためだ。
工業地帯は少しずつ地図も変わっている、自分が知っている所が無くなって逃げ場所を見失って死ぬことだってあるのだ。
しっかりとした情報と完璧な経路は被害を最小限に抑えることができるのだ。
私は何度も見直して移動経路と逃走経路を作る。
午後になり、彼が帰ってくる。
彼の見た警備状態と当てはめて、逃走経路を組み立てる。
「よし、これで良いだろう」
数時間かけて最高の逃走経路を完成させる。
それが終わると私はすぐに眠った。
任務前日
彼はもう一度下見に行く、念入りな作業が成功に繋ぐからだ。
その間、私は練習を済ませ、拳銃の掃除と使用する装備品のチェックをする。
その作業を済ませると彼が帰ってくる。
彼は警備の変化が無いことを告げると、本を読み始める。
あの日から彼は変わっていた、彼の行動は変だ。
「何がしたいんですか?」
彼は話を無視して私を抱いていた。
私は振り払えなかった、いや振り払おうとしなかった。
「もし」
彼は急に喋りだす。
「もし、君を・・・」
彼はためらい、口をつぐむ。
「いや、なんでもない。」
彼は腕を放し椅子に座り目をつぶる。
「明日の任務のために休む。」
彼はそういうと眠った。
 私は言葉の続きが気になり目が覚めていた。
『もし、君を・・・』
『君を・・・』一体何が言いたい?
殺したい、裏切りたい、何がしたい?
解らない、解らない、解らない、解らない、解らない、解らない、解らない、解らない、解らない、解らない、解らない、解らない。
考えたくない、こんなことどうでもいい、必要ない。
必要ない、求めてほしくない、誰も認めなくていい、誰も見なくていい、見るな、見るな、見るな、見るな!
気付いたときは朝だった。
いつの間にか眠っていたのだろう。
気分はちょうどいい、体もちゃんと動く。
私は作業着に着替えると、手配された車に乗る。
工業地帯まではこの、清掃業の車に乗って移動する。
拳銃の動作確認を済ませると、作業道具の中に入れ車を走らせる。
運転はアルが行う。
無言で走る車、ラジオから流れる陽気な曲が緊張感をより一層深めた。
工業地帯の検問でアルは作業内容が書かれた紙を渡し中に入る。
彼は笑顔で挨拶をしながら廊下を歩く。
この笑顔は作り物だ、怪しまれないように行動するために訓練されたものだ。
私は感情を表すことが苦手で笑顔を作ることができない。
それでは、任務に支障が起きるため、私は恥ずかしがるという行動を覚えさせられた、女性の概念から恥ずかしがるという行動は有効らしいが大抵そういう考えはしてほしくは無い。
長い廊下を歩き第一倉庫へと到着する。
私とアルはモップを取り出しコンテナへと近づく。
モップには何も仕掛けは無い、ただの飾りで持っているだけだ。
二手に別れ箱を開ける。
私はコンテナの中にある箱を一つ開ける。
中身は缶詰などの食品が入っていた。
「こっちは無いようだ」
彼の声に私も答える。
「こっちも、食品しかない。」
「移動だ、第二倉庫へと向うぞ。」
彼はモップをしまうと、そそくさとその場を立ち去る。
第二倉庫。
さっきの手順で箱を開けようとしたが。
「メイ!こっちへ来てくれ。」
彼の呼び声に私は向う。
「これを見てくれ。」
彼は地面の方を指差す、そこには微かだが地面に綺麗な四角い割れ目があった。
「隠し場所だ、もしかすると・・・。」
「密輸ルートまたは、地下倉庫。」
彼は砂埃を払い人の手が入るほどの穴を見つけ、力ずくで引っ張る。
取り除いた所は地下の階段へと続く道があった。
私たちは、武器を持ち地下へと降りる。
ライトが行く先を照らす。
ゆっくりと下へ降りていくとその先は、光が見える場所へと続く。
「止まれ。」
彼は光の方へと近づき外を見回す。
「来い、これを見てくれ。」
私は近づきその光景を見る。
「一体これは?」
「これが集めた兵器の数か・・・。」
広い倉庫の中に武器が山ほど積んであった。
「これは・・・町一つどころか、国一つ破壊できるぞ。」
私たちは作業員の見ていない所を走りロッカールームにたどり着く。
ドアを少し開け、誰かいないかを確認するが、一人だけ着替えている人がいた。
「動くな」
彼は男の後ろを取り頭にサイレンサー付の銃を突きつける。
「!」
彼は男の顔を見て驚く。
「おいおい、仲間を殺すなんてなしだぜ。」
その男に見覚えがあった、仲間のレンだ。
「レン!何をやっている?」
レンは苦笑して言う。
「こっちも任務で、地図に隠された場所を探せって言われたから、ここを見つけたのに、他の任務にかぶるとは・・・。」
彼はここで使われている作業服を探す。
「男用はあるが、あいにくレディには無いようだ。」
無精髭が特徴的な三十代おじさんがレディというのが合わなかった。
「なら、私たちは倉庫を調べる、君は敵に見つからないように入手ルートを探ってくれ。」
私はロッカールームを出て見つからないように廊下を走る。
見慣れない廊下を走り、情報がある所を探す。
走り続けた先に資料室を見つける。
資料室には誰もいない。
ドアを開けると資料を探る。
入荷した武器や買い手を探す。
「これは・・・!」
買い手の名簿には有名な悪人の名から小物まで、世界の買い手が動いていた。
だが、驚いたのはそのことでは無かった、名前に覚えがある人間がいたからだ。
「アルが危ない!」
銃声が鳴り響く。
「くっ!」
私は銃を構え飛び出た。
さっきの資料に載っていた男それは・・・レンだった。



「アル!」
アルは血だまりの中で倒れている。
「相手を騙すのは簡単なものだ。」
銃を持ったレンはアルに銃口を向ける。
「死ね。」
レンは引き金を引こうとするが。
ドン!
遠くから爆発する音が聞こえる。
『大変です、工場が爆発しました!』
「何!」
通信を聞いたレン、アルは苦しみながらも微笑む。
「そんな事もあろうかと第一倉庫から爆弾を仕掛けていた。お前に会う前に何個かこの場に仕掛けてある。」
アルはスイッチをレンに見せる。
「メイ!」
アルに呼ばれて私は少し動く。
「この場で死んでも悔いは無いよな?」
私は戸惑い考える、この場で死んでも・・・悔いは・・・
無い
「ええ、無いです」
彼は笑い大声で言う。
「そうか!だが、死ぬ前に言いたい事が一つだけある!」
彼は私を見て言う。
「愛している!」
「え?」
彼はそう言うと爆弾のボタンを押す。
爆発、地下倉庫は炎に包まれる。
「何をやっている!逃げるな!火を消せ!」
火気類に火の手が回り爆発を起こす。
その炎はまるで踊っているかのように舞う。
「立てる?」
私は血まみれのアルを起こし聞く。
「何とか、逃げられるのか?」
「やってみないとわからない。けどやらないと変わらない。」
アルと私は走り出口の階段へ向う。
「こうなったら、貴様らを殺す。」
レンは私たちに銃を向けるが、横から炎が襲い掛かり燃える。
「あっ!熱い!誰か!火を、火をけしてくれえええええぇぇぇ!」
レンは燃えながらその場に倒れる。
「哀れだ。」
アルはそう言うと出口へ向う。
「ハンカチを。」
私はハンカチをアルに渡す。
階段は煙が立ち込めていて危険な状態だった。
爆発
もう地下が持たない事はわかっていた。
階段を上り出口に向うが途中でアルが倒れる。
「くそ!目が霞む、ここで死ぬのか?」
彼は弱音を吐く、私は初めて彼の弱音を聞いた。
「死ぬのは嫌だ!せっかく言えたんだ!死んでたまるか!」
彼は涙を流しながら倒れている。
「動け!俺の体よ動け!」
彼は叫びながら体を起こす。
私は彼に肩を貸す。
「行くよ、出口に未練があるでしょ?」
彼は涙を拭き言う。
「ありがとう」
彼の眼差しは本気だった、彼は力強く踏み出す。
一歩一歩踏みしめていくうちに光が見える出口の光が・・・。



「というわけで、彼女の話はここでおしまい。」
「えー、もっと話を聞かしてよ。」
一人の母親が椅子に座り七歳くらいの少年に話をしていた。
「ここから先はどうなったかは・・・覚えていないの。」
「ずるい!全部話してくれるって言ったろ?」
「こら!母さんを困らせるんじゃない。」
父親がその子供をしかる。
「でも、俺もいつかは情報機関に入りたいな。」
父のほうは言う。
「そうなると、お父さんお母さんと離れ離れになるぞ。」
子供は困った顔で言う。
「なら嫌だ!離れ離れになりたくない。」
両親は笑う。
「さて、寝る時間だ!ベッドに入りなさい。」
父親はベッドへ子供を連れて行く。
母親の方はそれを見て微笑する。
「メイ」
父親は、母親のほうを見て言う。
「アル」
母親になったメイは父親になったアルの名前を呼ぶ。
「もうあれから何十年も経ったか・・・」
アルはもう一つの椅子に腰掛ける。
「何年も平和が続いていますね。」
彼は微笑む。
「ああ、仕事を止めて新しい人生を始め、こうして二人でのんびり過ごす。」
「覚えています?貴方が死に掛けた時言った言葉を。」
「何だったかな?」
「愛している」
アルは苦笑いをする。
「よしてくれ、恥ずかしい。」
二人は笑う。
「今も変わらないさ・・・この先もずっと。」
「え?」
彼の一言を彼女は聞く。
「この先のことだよ。」


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